おおきく振りかぶって
- 著
- ひぐちアサ
『おおきく振りかぶって』は、ひぐちアサ作のマンガ作品。通称(愛称)「おお振り」。
月刊「アフタヌーン」で、2003年11月号から掲載開始。
埼玉県の県立高校(西浦高校)で、新設された硬式野球部は、軟式時代の野球部OGの女監督と、1年生部員だけのチームだった。
オレらのエースは暗くて卑屈。勝つために、弱気なエースのために。行け、オレら!
(単行本1巻表4コピーより)
用語や登場人物
- おおきく振りかぶって
- タイトルの『おおきく振りかぶって』が、どんな内容を示唆しているか? は、おもしろい注目ポイントだ。
コミック本1巻のカバーでは、振りかぶっているポーズの三橋が、おおきく描かれている。しかし、作中の三橋は、ノーワインドアップ投法。彼が「振りかぶって投げる」と、決意を口にするのは、物語のずっと先でのことになる。
アフタヌーンKC1巻カバー
第1回「ほんとのエース」
新入学時期の西浦高校。各種の部活やサークルが、新入メンバー勧誘をしている内、1年生で入学したばかりの三橋廉は野球部のグラウンドを見に行く。中学までやっていた野球を、高校では止めるつもりでいた三橋は、謎のジャージ女に捕まり、グラウンドに引きずられて行くが。
- 三橋廉
- 中学時代、群馬の私立三星学園中等部で野球部のピッチャーだった。
- マンガは、三橋が中等部野球部で嫌われ、孤立していた様子の回想から、描き出される。
中学の部活で孤立していた三橋は、埼玉の公立高校を受験。埼玉県立西浦高に進み、野球を止めるつもりでいたが、グラウンドを見に行ったところを、新生野球部の部員勧誘をしていたモモカン(百枝まりあ)に捕まる。そのまま、硬式野球部に引き込まれてしまう三橋だが……。 - 性格は、気弱で自信がなく、優柔不断で卑屈。言語不明瞭なうえ、よく挙動不審になる。
(とり得は、ともかくピッチングが好きなことと、ピッチャーズ・マウンドへの執着心。努力は人一倍するが、我流の無茶なトレーニングも重ねていた。さらに言えば、無駄も目立つが全力を尽くすことはする)
- 中学野球部での三橋の孤立は、私立三星の理事の孫であるため、実力もないのにヒイキでピッチャーを任せられた、と周囲に思われたことが原因。(この事情は、1巻、2巻を通して描かれていく)
- 後にチームメイトの阿部は、三橋のことを「こいつが誰かを嫌うことだけはない」と考えるようになる。
- 物語の先の方では、監督のモモカンが三橋のピッチャーズマウンドへの執着心をかなり買っている感じの描写が、何度か繰り返される。が、三橋本人を、直接誉めるような場面は見られない。例えば、三橋母とはじめて会う場面などで、率直に誉めている。
- モモカン(百枝まりあ)
- 本名、百枝まりあ。三橋たちが入学した年に、西浦高校に新設された硬式野球部の監督。部員になる田島らが、後につけるニックネームが「モモカン」。
- 以前、西浦にあった軟式野球部のOG。新入1年生を集めて10人で部を発足させる。「監督が女なんてあり得ない」と去ろうとする花井を、名人芸のノックと、夏みかんを片手で握りつぶす生ジュース(握力の示威パフォーマンス)で威圧(笑)。
- 年齢、23歳(11巻エピソード第20回、夏大会時点)。
- エピソード第17回「次は!?」で、モモカンは野球部員一同を引率して、岩槻西高対埼玉高の球場に試合観戦に出向く。同じ球場に、ビデオ撮影のためやって来る花井の母、阿部の母と軽く確認打ち合わせを。その後、花井母に野球キャリアを聞かれ、聞かれるままに応えていく。
- モモカンは、小学生の頃は、リトルではなく、地域のスポーツクラブに入り、女子もけっこういた中でサッカーも野球もやっていた。
- 西浦高の生徒だった頃は、旧軟式野球部でマネージャーをやっていた。
「顧問の先生は野球したことない人だったし/部員も少なかったんで/ノックも打撃投手も毎日やってたんです」。 - 「野球したことないって/志賀先生? じゃなくて?」と、花井の母、「ええ/もう転任されて/部は軟式だったしね」「今とは/全然違ったんですよ」と、モモカン。
- シガポ(志賀剛司)
- 本名、志賀剛司。西浦高の数学教師。三橋たちが入学した年に、西浦に新設された硬式野球部の責任教師(部長教師)。後に部員たちが呼ぶようになる愛称が「シガポ」。
- エピソード第2回以降で描かれていくモモカンとのコンビネーションは、いい。
- 志賀本人は部員たちに「先生は野球は詳しくない」と自称するが、野球部が始動すると、マッサージや、メンタル・トレーニングなどを基礎理論から学んでいる様子が描かれる。
- 西浦高新生野球部
- 過去に軟式野球部しかなかった西浦高で、三橋たちが入学した年に再スタートした硬式野球部。軟式野球部の方は、百枝の卒業後、数年間部員ゼロだったようだ。
- エピソード第2回「キャッチャーの役割」で描かれる合宿では、志賀が百枝に「監督を頼んで、野球部を復活させた」とも噂される。
- 新入生だけ10人の部員と、マネジ1名ではじまった西浦の新生野球部は、GWの合宿を経て、夏大会に向け、各選手が複数のポジションをこなせるシフトで猛練習をしていくことになる。
- 阿部隆也
- 地区ブロック1と言われたシニアチーム出身。西浦野球部では正捕手に。出身校が同じ栄口を誘って、春休み中から新生野球部に参加。グラウンド整備などをしていた。
- 性格的に仕切り屋になりがちな面も(例えば、三橋と花井の3打席勝負を仕組んで、花井入部のきっかけを作ったのは阿部)。三橋のクセ球「まっすぐ」と、異様にいいコントロールを見抜き、「お前をホントのエースにしてやる」「そのかわりオレの言う通りに投げろよ」と三橋に告げる。
- モモカンの評価では、田島、花井に次いで、西浦野球部では3番手の選手。
- 阿部は、西浦のチーム内では、野球を続けていくことに1番自覚的な見通しを持っているようだ。
野球では無名の西浦には、部が新設されると聞き、大ばくちで入った。 - 新生野球部が本格始動すると、花井の指名で、副主将に。
- 栄口勇人
- シニア出身(本人は出身チームのことを「弱い」と、言っている)。西浦野球部では二塁手に。同じ中学出身の阿部に誘われ、春休み中から新生野球部に参加。グラウンド整備などをしていた。
(阿部と栄口は、中学時代はシニアの試合で顔は見知っていたが、親しい付き合いはしていなかった)
- 性格的にはデリケート、あるいは神経質な面もあり、緊張すると神経性の下痢を起こすことも。
- 新生野球部が本格始動すると、花井の指名で、副主将の1人なり、内野の中心を任されるように。
しばしば、三橋と阿部がギクシャクするときに、コミュニケーションを仲介したり仲裁したりもする。 - 野球部が始動しだすと、堅実な犠牲バントでの繋ぎ役として信頼されるように。
- 田島悠一郎
- 関東中から選手が集まる、とされる強豪シニアチーム出身。チームの4番、サードを委ねられていた。西浦には、家に近いからという理由で入学。祖父の畑は西浦のグランドに隣接している。
- 小柄だが、抜群の運動能力と、野球センスを持つ。
- 西浦チームでは、サードで、控え捕手に。モモカンの評価では、素材のレベルが違う、ナンバー1選手。
- タイプとしては直感型だが、試合での集中力は高い。普段の言動も、理屈より気分でコミュニケーションする。試合中はカッコイイが、普段は、三橋とは別タイプの子ども。例えば、ランニングでかいた汗が気持ち悪いと、グラウンドで全裸になるなどして、モモカンを怒らせ、花井を困らせるように。
- 三橋とは同級生になり、言語不明瞭な三橋相手に、一番意思の疎通ができるようになる。しかし、傍で聞いていると、脈絡のわからない2人のやりとりは、よく周囲を疲れさせることに(でも、2人の間では通じる)。
- 花井梓
- 中学の野球部ではプルヒッタータイプの「右の強打者」として主に4番を打っていた。打者としては、選球眼が良い。西浦入学当初は野球部にこだわりを示さず、監督が女という理由で入部を止めようとする。しかし、モモカンの夏ミカン握り潰しパフォーマンスに威圧された後、阿部の策謀で三橋と勝負させられ、3打席勝負を経て入部。モモカン評価では、部員の内で田島に次ぐ素質の選手。
- 新生野球部が本格始動するようになると、外野手と控え投手に。さらに、部員全員一致で、主将に推され、モモカンも同意して着任(3巻)。推された理由は、次のようなもの。
「同じ学年だけだから/ちゃんと注意とかできるヤツがいいな」、「そんで監督にもモノが言えて」、「一生懸命なんだけど」、「一人で空回っちゃわないヤツ」、「縁の下の力持ちをやってもくさらずにいれる自信をもってて」、「下の者を放っておけない/ムシロ放っておくほうがストレスになるような−−……」。部員メンバーたちが、特に相談もなくそれぞれに似たようなことを考える感じの描写で、全員の視線が花井に集まっていった。
- まっすぐ
- 三橋の持ち球である、ストレートもどきのクセ球。中学時代、正規の投球指導を受けず、自己流で投球フォームを作った三橋ならではの球で、バックスピンが素直でなく「速度とで出しの角度がかみあっていない(叶談)」。そのため、選球眼のいい打者ほど、球の下を打ち、打ち上げてしまう。西浦入部時期に球速101キロというヘロ球だから、慣れれば攻略の容易い球ではある。しかし、阿部は、三橋の異様に精確なコントロールを見抜き、打者が「まっすぐ」に慣れない配球を組み立て、「まっすぐ」を打たせて捕る決め球に仕立てる。花井が3打席勝負で三橋に敗れるのもこの配球のせいだ。
- 第2回「キャッチャーの役割」 で、モモカンは、三橋のコントロールのよさを「全力投球をしていないからできている」と指摘する。
第2回「キャッチャーの役割」
新生西浦野球部は、GW中に合宿をし、その仕上げとして、練習試合を組む。対戦相手は、かつて三橋が通った学園の高等部の野球部。レギュラーメンバーは遠征試合に出ているので、補欠チームでよければということで組まれた試合には、中学野球部時代、三橋をシカトしていたメンバーが多く加わっている。
- GW合宿
- 新生西浦野球部はGWで合宿をし、最終日に三星学園野球部との練習試合もすることに。合宿の様子は、エピソード第2回(1巻)で描かれる。
- 合宿前、野球部結成初日の様子で、読者にとってキャラクターの外見と名前が一致して把握できるように描かれているのは、三橋、モモカン、シガポ、阿部、栄口、田島、花井まで。他の部員やマネジの篠岡については、合宿と対三星の練習試合を通じて、描写が重ねられていく。
- 水谷文貴
- 中学時代は、野球部で二塁手をメインに、外野手を兼任していた。西浦野球部が本格始動すると、外野手をメインに、ポジションがシフトすると、栄口と二塁手を代わることも。
- 性格は緩やか。弱気な発言や、気の抜けたリアクションが目立つ。三橋の不明瞭な言動の意を汲んで、皆に仲介するなど、他者への気遣いが敏感で細やかな面も目立つ。
- 巣山尚治
- 中学時代のポジションは不明。野球部に属していたかと思われるが、これも定かではない。西浦野球部が本格始動すると、遊撃手をメインに、ポジションがシフトすると、三塁手に代わることも。守備は堅実。打撃でも常にクリーンナップを打つ。
- 試合では、動揺する水谷や栄口を落ち着かせたり、対戦校選手の分析などで冷静な様子が目出つ。
- 普段は落ち着いている巣山が、観戦に際してモモカンの用意した試合展開予想ゲームには動揺。罰ゲーム用の「ま○゛い高級プロテイン」に激しく取り乱した時は、他の部員を驚かせる(3巻、エピソード7回)。
- 沖一利
- 中学時代は野球部。サウスポーで、2年まで投手経験もあったが、3年の時は一塁手に専念していた。西浦野球部が本格始動すると、一塁手をメインに、控え投手も。モモカンは、投手としての将来性に期待している気配もある。
- 気が弱く控えめな性格。三橋同様、阿部の大声が苦手。阿部に、大声をだすことが、三橋の挙動不審の理由の1つと指摘する場面も。
- 後に、沖は、ピンチでもあくまで投げ続けようとする三橋の姿勢を「投球中毒」と考えるが、その後ろを守るのはやる気が出る、と思うように。
- 泉孝介
- 中学時代は野球部に属していた。新生西浦野球部では、外野手に。
- 三橋、田島と同じクラス。自然と2人の御目付け役になっていく。比較的冷静な性格だったのが幸いしたのか、普段の田島のストッパー役に。周りとの会話にまごつく三橋にフォローを入れることも。
- 他の部員たちを疲れさせる、三橋と田島の意味不明な会話にも動じず、「俺はもう慣れた」。
- ダブりで同学年同級になった浜田とは、中学野球部の先輩後輩だったが、普通にタメ口をきく。
- 西広辰太郎
- 中学時代は陸上部に属していた野球初心者。運動神経は良い。新生西浦野球部の公式戦では基本的にベンチに控え、伝令役や三塁コーチャーなどをすることに。
- 学業成績は優秀。三橋、田島をメイン・ターゲットにした赤点回避勉強会では、花井が「西広先生」と呼び「試験のための勉強をあえてしない強者」と紹介。さらに「何でも教えてくれる」と紹介されるので、特に苦手な科目も無いらしい。
- 篠岡千代
- 中学は、阿部、栄口と同窓。ソフトボール部員(遊撃手)だったが、高校野球への熱烈な憧れから、新生西浦野球部のマネジ(マネージャー)になる。第1巻(第2回)では、合宿場に向かうマイクロバスにすでにマネジとして乗車している形で登場。入部の経緯は、1巻採録の、おまけまんが(1) 「そのころのマネジ」で読める。性格面は、明るく屈託が無い。
- ともかく野球が好きだし、高校野球についてはマニアックに詳しい。試合観戦にオペラグラスや、対戦校の過去の戦跡記録を持参、制服を見るだけでどの学校か判別するなど、モモカンもたじろくマニアぶり(笑)を発揮。この知識と熱意をいかんなく発揮して、対戦校の試合ビデオを舐める様にチェックし、篠岡が整理する対戦チームのデータは、西浦チームの有力な武器になっていく。
第3回「プレイ!!」〜第5回「投手の条件」
エピソード3回〜5回では、西浦対三星の練習試合の経緯と、その直後が描かれる。
(エピソード第2回の末尾では、試合開始前の練習の様子などまでが描かれるが、試合が始まるのは第3回から)
- 三星学園(高等部)野球部
- 作中の群馬県では、野球は強い感じで、西浦から申し込まれる練習試合も「本来ならお断りする」ランク。グラウンドを含めた野球部施設は充実しているし、県外から優秀な生徒をスカウトしてきている。
- 叶修悟
- 三星学園中等部部野球で控え選手だった。そのまま三星高等部に進み野球部員に。
- 三星中等部の野球部では控え投手だったが、唯一、三橋の投球へのこだわりを理解していた。エピソード第1回で、三橋が中学時代のことについて西浦のグラウンドで語る場面に、回想として目鼻立ちまで描かれたカットが唯一描かれるのが叶。
第6回「スゴイ投手?」〜第8回「スゴイ投手・2」
エピソード6回〜8回では、GW最終日の西浦野球部が描かれる。合宿場からは前日引き上げてきた西浦チームだが、休日登校をしての練習はある。
学校に向かう途中、栄口と一緒になる三橋は、雑談の内で、阿部がシニア時代組んでいた「スゴイ投手」の話を聞かされる。そしてモモカンに率いられて観戦に向かう春大会公式戦の出場校、武蔵野第一には、噂の「スゴイ投手」榛名榛名元希がいる。スタジアムには、榛名の投球を見に、ライバル校の選手や、スカウトかもしれない大人なども来場している。
- 武蔵野第一高校
- 作中の埼玉県では、サッカーの強い高校として知られ、野球では無名だった。西浦の新生野球部が活動を開始した年の前年度秋大会から躍進。西浦チームが春大会観戦に行った試合は、武蔵野第一と浦和総合の試合。武蔵野はこの試合に勝ち、県下ベスト8に進むが、ARC学園高校に敗退。夏大会ではCシードに。
- 浦和総合学園
- 作中の埼玉県では、野球の強い高校として知られている。過去に何度か甲子園に進出したことがある。
- 榛名元希
- 阿部や三橋たちより1学年上のキャラクター。武蔵野第一高校野球部員。
- シニア時代、阿部と同じチームでバッテリーを組んでいた。西浦に新生野球部が出来た年の春大会では、弱小の武蔵野第一を躍進させ、県下一の左腕ともてはやす報道もあった(らしい)。
- 本編では、第6回で、西浦チームが春大会の試合観戦に行った先で初登場(番外編『基本のキホン!』にも登場)。
栄口は、榛名のことをシンプルな意味で「すごい投手」と呼ぶが、三橋は、プロを目指して自分の道を貫く榛名のことを「すごい奴だが、チームメイトとしては最低」と評す。 - 秋丸恭平
- 武蔵野第一高校野球部員。控え捕手。エピソード第6回に初登場。
- 春日部市立高校
- 西浦の新生野球部が活動を開始した年の前年度の秋大会で、春日部市立高は武蔵野第一と当たり、4回からリリーフした榛名から得点出来ず敗退していた。
- エピソード第7回で、春大会武蔵野第一対浦和総合の試合観戦に部を挙げて来ていて初登場。この時点の2年に、鈴木葵、涼の双子のバッテリーがいる(この兄弟は3巻のエピソード第7回が初登場)。
- 桐青高校
- 作中の埼玉県では、野球の強豪高として知られる。西浦に新生野球部が発足する前年度、夏の甲子園へ出場。キリスト教系の私立中高一貫校。
- 桐青の監督は、春大会では武蔵野第一は浦和総合に負けると予想、夏大会のために、正捕手で主将の河合和己(3年)、正投手の高瀬準太(2年)、控え投手の仲沢利央(1年)の3人を、春大会浦和総合対武蔵野第一の試合観戦に出した。この3人は、エピソード第7回(第3巻)が初登場。
- エピソード第11回(第4巻)では、夏の埼玉大会の抽選会で西浦チームは初戦の相手に、Bシードの桐青を引き当ててしまうが。
- 河合和己
- 桐青高校3年。西浦野球部が活動を開始した春時点で、野球部主将で正捕手。
- 夏大会の2回戦で、桐青野球部が西浦に負けた後、主将と部活を引退。受験勉強に専心しようとする。
エピソード第17回「次は!?」では、仲沢呂佳に夜のファミレスに呼び出され、「呂佳さんには世話ンなった分返したい」と、西浦チームのや急について、試合で体験したこと、試合後に分析したことなどを、問われるままに語って聞かせる。
- 高瀬準太
- 桐青高野球部員。西浦野球部が活動を開始した春時点で、2年生の正投手。
- 仲沢利央
- 桐青高野球部1年生。西浦野球部が活動を開始した春時点で、控え捕手。
- 浦和総合対武蔵野第一の試合に4回の表から登板する榛名の投球をみて、利央は「ふつうっすね」と言うが、「お前/榛名になんかあんのか?」と河合に訊かれる。横から高瀬が口を挟み、美丞大狭山狭山で野球部コーチをしている兄(仲沢呂佳)が、利央を無視したのに、榛名にはスカウトの声をかけた、とバラす。
- 利央は、夏大会の途中から、西浦の田島とメル友になる(第8巻)。
第9回「ちゃくちゃくと」〜第11回「夏がはじまる」
西浦野球部は、正投手(三橋)、正捕手(阿部)の他に、控え投手に、花井、沖を、控え捕手に田島を据え、チームとして形を整えていく。さらに、主将花井、副主将に阿部と栄口が選ばれ、夏大会に向けての練習が続けられる。
そして、夏大の組み合わせ抽選会、埼玉大会の開会式を経て、西浦チームは、強豪桐青高を相手に、初の公式戦に臨む。
- 三橋母
- フルネームは、三橋尚江。西浦の卒業生。
共稼ぎなので、突発勉強会になった日は、野球部員一同が廉の部屋に上がり込んでから帰宅。ところが、たまたま廉の誕生日に友だちを連れてくると聞いたことから勘違い、あれこれ食料を買い込んで来てしまった。中学時代の廉は、学校(三星)に近い群馬の親戚の家に寄宿していた。友だちが家に来るのも始めてのことで、はりきった様子だ。三橋は、意図せずに、サプライズ・パーティーを自己演出した形になってしまう(笑)。
- エピソード第11回で、始めてモモカンに会った三橋母が挨拶すると、モモカンは「あー、やっぱりー!/似てますよねー!」とコメント。
(第5巻でも、数年ぶりに三橋母と再会した浜田も、似た者親子、と感じる)
- 三橋の投球練習場
- 三橋の自宅の庭にある、手製の投球練習場。突発勉強会で三橋宅を訪れた時、阿部が気づく。
金属フレームにネットを被せ、その前にストライク・ゾーンを9分割した木製の的がガムテープで下げられている(定かではないが的の位置を上下に微調整できるかもしれない)。手作り感あふれる設備で、特に木製の的は使い込んだ感じ。ガムテープは、何度も貼りなおされていて、阿部は、三橋が帰宅した後も、調整スケジュールを考えずに、自分で投球練習をしていることを察す。
- 投球練習用の「的」は、まだ小二の頃の三橋が父親にせがんで作ってもらったのが最初であることは、4巻巻末に採録の「おまけ」マンガで読める。軟球を硬球に切り替えた後、最初の的は廃棄された。
- 浜田良郎
- 西浦の生徒で、三橋、田島、泉のクラスメート。エピソードの第11回で、三橋らが抽選会場から学校に戻ってきたところで初登場。実は浜田は、三橋が小2の頃、同じアパート(山岸荘)に住んでいた幼馴染の「ハマちゃん」だった。浜田は、本来なら三橋らより1学年上だったが、留年して同学年になっていた。そのため三橋は、浜田の方から尋ねられるまで、記憶の内のハマちゃんとクラスメートの浜田が結びつかずにいたのだった。浜田は、野球部員の泉と小中が同窓の先輩後輩だったが、今やクラスメートの泉は浜田に平然とタメ口をきいている。
浜田自身は、ダブりの理由を訊く田島に、「バカ」と称す(しかし、少し後、元同学年の生徒には留年の理由を「汚れた過去」と言われても特に否定しない)。 - 浜田は、抽選会から戻ってきた三橋や花井たちに「野球部の応援団つくってもいいかな」と切り出す。
- 西浦高野球部応援団
- 浜田良郎が呼びかける、有志ボランティアの野球部応援団。学校に公認された部活動ではないもの、としてスタート。
- 試合会場での応援だけでなく、脚の早い生徒を選んで、ベースランニング、内野処理の練習に協力など。部員の少ない野球部を、地味なところから応援していく。
- 野球部初の公式戦(対桐青戦)には、1年生やその父兄を中心に、スタジアムに200人ほどの応援観客を動員。
後に、シガポは浜田に「桐青戦の応援は100点だったよ!」「みんなも感謝してるよ!」と告げる(エピソード第13回)。
- 花井母
- フルネームは、花井きく江。
- 夏の高校野球埼玉大会開会式に三橋母を誘う電話で初登場(エピソード第11回)。
- 開会式会場で、三橋母と共にモモカンと始めて会う花井母は、花井が、今の野球部で「ホントに楽しいみたい」と言い、家で「監督や先生のことをほめる」「中学ではそんなことなかった」とも語る。
花井母は、開会式会場で三橋母と相談し、野球部の父母会を作ることにした、とモモカンに語る。 - エピソード第17回「次は!?」では、モモカンに率いられた西浦野球部が、岩槻西高対埼玉高の試合観戦に出向く球場のスタジアムに阿部母(阿部美佐枝)と共に現れ、モモカンに挨拶してくる。2人は、動きはじめた野球部父母会の活動で、試合のビデオ録画にやって来たのだった。
花井母は高校野球が好きで、息子が小学生の頃から野球をしてたこともあって観戦慣れしている様子。
試合の録画について、軽く確認打ち合わせをしながら、花井の母はモモカンに彼女の野球キャリアを訊く。西浦に前あった軟式野球部ではマネージャーだったという話を聞き、モモカンが部員たちの傍へ戻っていた後、花井母は、(今のは何年前の話なんだろう)と思う。(その頃の部員が今まで一人も現れないのはなんでかしら?/一回部の歴史が途切れているとはいえ/差し入れがてら百枝さんに会いに来そうなもんだけど……/百枝さんのチームメイトは/今どうしているんだろう)(イロイロ聞きたいけどまだ無理だわ〜〜/大会 終わったら飲み会開こっと!)と、あれこれ思う。
第12回「挑め!」〜第15回「決着!」
西浦野球部初の公式戦、夏の高校野球埼玉大会の2回戦がはじまる。Bシードに選ばれている強豪桐青を対戦相手に引き当てたので、2回戦が初戦になったのだ。試合は西浦先攻。
- 「挑め!」
- 「挑め!」は、5巻採録採録の、エピソード第12回タイトル。4巻巻末では、西浦野球部の球状入りまでが描かれたが、5巻を通して、対桐青戦の試合開始直前の練習風景から、3回の表までが描かれる。
- 「もう1点!」
- 「もう1点!」は、6巻採録採録の、エピソード第13回タイトル。6巻を通して、対桐青戦の3回の裏から7回の表終了時点までが描かれる。
- 「逆転!」
- 「逆転!」は、7巻採録の、エピソード第14回タイトル。7巻を通して、対桐青戦の3回の裏から7回の表終了時点までが描かれる。
- 「決着!」
- 「決着!」は、8巻採録の、エピソード第15回タイトル。対桐青戦の決着までが描かれる。
第16回「ひとつ勝って」、第17回「次は!?」
- 「ひとつ勝って」
- 「ひとつ勝って」は、8巻採録の、エピソード第16回タイトル。
- 三橋の家に寄った瑠理は、群馬の家に帰っていくが、帰り際、今日勝ったことを、自分で叶に伝えるように、言い置いていく。
ベッドに潜り込む三橋は、三星を止めることにした後、叶修吾が自分に向けた言葉「やめんなよ/絶対野球部 入れよ」「お前が今までやってたのは/違うんだよ/今/やめちゃダメだから!」を思い出す。 - 対桐青戦の翌日、微熱を出した三橋は学校を休む。学校は体育祭の日で、同級の田島、泉や、阿部、花井が昼の休憩時間に三橋の家を訪れる。前日の試合中、阿部にピッチャーを替われと言われたのに、マウンドを降りなかったことを詫びる三橋に、阿部は「アレはウソだよ」と言う。混乱する三橋に、「オレたちはふつーだよ/ふつーに野球をやってるだけ!」と、花井。
阿部たちが、学校に戻った後、“……こんなに嬉しいのが/ふつうなのか……”と思う三橋は、勝利報告の携帯メールを、叶に打つ。 - 一方、夜、自宅に戻った、桐青の仲沢利央は、美丞大狭山高校野球部のコーチをしている兄の呂佳に「負け犬」とあざ笑われ、「兄ちゃんが美丞大狭山のみんなでカタキとってやるから/西浦との対戦データみんなもってこい」と命じられる。
- 仲沢呂佳
- 桐青高野球部OBで、今は、美丞大狭山高校野球部のコーチをしている。桐青高野球部1年生の仲沢利央の兄。
- 初登場は、エピソード第16回「ひとつ勝って」の最後の場面。ただ、名前は「呂佳さん」「利央の兄さん」として、桐青高野球部員の間の話題にあがったことがあった(エピソード第7回)。この時は、弟の利央に、桐青野球部から西浦との対戦データを持ち出すよう命じた。
- エピソード第17回「次は!?」では、桐青野球部の主将だった河合和己を、夜のファミレスに呼び出す。呂佳は、西浦野球部をダークホースと認め、実際に試合をした河合から、話を聞きだしていく。
- 呂佳が桐青高野球部の3年生部員だった夏、ベンチ入りし地区大会1回戦でチームが敗退した。このことは、第17回で会話する河合の回想で明らかにされる(当時河合は1年生だった)。
- 滝井朋也
- 美丞大狭山高校野球部の今の監督。
ファミレスで仲沢呂佳への情報提供を終えた後の河合和己が、「監督さんは元気ですか?」と、話題にのぼる。 - 友井紋乃と、小川美亜
- 友井紋乃と、小川美亜は、西浦高1年、学校にいくつかあるダンス・サークルの1つのメンバー。2人で、野球部の応援でチアガールをやろうと思いつき、篠岡千代に打診してくる。
チアをやりたいのは有志の2人だけで、2人が属すサークルで応援をするわけではない「2人ばかしで踊ってもいいのかな」という相談に、「私はチアガール好きだよ/きっとみんなも好きだと思うな」と、千代。
- エピソード第18回「3回戦」時点で、2人は応援団に加わる感じで、浜田良郎らと行動を共にしている。
- 阿部母
- フルネームは、阿部美佐枝。エピソード第17回で、花井きく江と連れ立って野球場に。動きはじめた野球部父母会の活動で、試合のビデオ録画にやって来たのだった。
阿部母は高校野球が好きで、阿部隆也もその弟も野球をしていることもあって観戦慣れしている様子。 - 市原豊
- 埼玉高校野球部員。夏大会の時点で2年生、正投手。
- 変化の大きいスクリューボールを投げる。
- 佐倉大地
- 埼玉高校野球部員。夏大会の時点で2年生、正捕手。
- 1年生としては立派な体格、見た目の印象もさわやか、野球も上手だしマジメ。
しかし「モノスゲアタマワルイ」。これは、同じ野球部の上級生部員たちの一致した見解。 - 佐倉は、夏大会1回戦では、6-6の打率10割を打ち出していた。対岩槻西高戦でも、延長の10回裏に決勝打を打ち、7対8で埼玉に勝利をもたらす。
(元々「佐倉くんはいい選手だわ」と思っていたモモカンだが、この決勝打には、チームの軸になれる選手、と舌をまく感じか) - 沖一利
- 西浦高1年生。野球部員で控え投手。
- 沖は、岩槻西高対埼玉高の試合を観戦に行ったスタジアムで、阿部に、気が弱い人間は話してる時大きい声だされるとそれだけでビビることもある、と指摘。阿部と三橋が体調管理のことを話してたのを横で聞いてた直後のことだ。この指摘は、阿部にはかなり意外なものだった様子。
- 小山大樹
- 埼玉高校野球部員主将。夏大会の時点で唯一の3年生。アダ名は「タイさん」。
- 夏大会2回戦では、2回の裏途中時点で、“やっぱりうちは二回戦〔ここ〕までかな/最後の夏に1つ勝てたことで/1人で続けてきたオレの部活人生は充分むくわれたよ”などと考え、“おまえのおかげだ/ありがとうな大地……”と、思いは続く。近傍のト書きネームでは“そんな埼玉主将の一人自己満足モードをよそに/試合はこの後大接戦となる”と記されている。純然たるト書きの類が、作中にはかなり少ない『おおきく振りかぶって』では、作者による直接的注釈とも思われるこのト書きは注目される。
第18回「3回戦」
- 用語や人名
- 解説
メモ
書誌情報
- アフタヌーンKC
アフタヌーンKC1巻2004年刊行
アフタヌーンKC2巻2004年刊行
アフタヌーンKC3巻2005年刊行
外伝的読みきり『基本のキホン!』採録。
アフタヌーンKC4巻2005年刊行
アフタヌーンKC5巻2005年刊行
アフタヌーンKC6巻2006年刊行
アフタヌーンKC7巻2007年刊行
アフタヌーンKC8巻2007年刊行
アフタヌーンKC9巻2007年刊行
アフタヌーンKC10巻2008年刊行
アフタヌーンKC11巻2008年刊行
アフタヌーンKC12巻2009年刊行
アフタヌーンKC13巻2009年刊行
アフタヌーンKC14巻2010年刊行
アフタヌーンKC15巻2010年刊行- bk1 - おおきく振りかぶって
アニメ関連
アニメ第1期
ソニー・ミュージックエンタテインメントより、2007年発売。
ソニー・ミュージックエンタテインメントより、2007年発売。
ソニー・ミュージックエンタテインメントより、2007年発売。
ソニー・ミュージックエンタテインメントより、2007年発売。
ソニー・ミュージックエンタテインメントより、2007年発売。
ソニー・ミュージックエンタテインメントより、2007年発売。
ソニー・ミュージックエンタテインメントより、2007年発売。
ソニー・ミュージックエンタテインメントより、2008年発売。
ソニー・ミュージックエンタテインメントより、2008年発売。
『基本のキホン!』採録。
ソニー・ミュージックエンタテインメントより、2008年発売。
アニプレックスより、2007年発売。
アニプレックスより、2007年発売。
アニプレックスより、2007年発売。
アニプレックスより、2007年発売。
アニプレックスより、2007年発売。
アニプレックスより、2007年発売。
アニプレックスより、2007年発売。
アニプレックスより、2008年発売。
アニプレックスより、2008年発売。
『基本のキホン!』採録。
アニプレックスより、2010年発売。
アニメ第1期関連商品
ゲームソフト
第1期アニメのキャラクター・デザイン、声優を使ったゲームソフト。マーベラスエンターテイメント発売。Nintendo DS用、2007年発売。
話題まとめ
チャットログ
- http://www.cre.ne.jp/writing/IRC/write-ex2/2009/10/20091018.html#200000
- 「おお振り」のちょっと変わった魅力について、など。
- http://www.cre.ne.jp/writing/IRC/write/2010/02/20100206.html#210000
- 「おお振り」は、韓国でも人気があるそうだ。
- http://www.cre.ne.jp/writing/IRC/write-ex2/2010/04/20100408.html#200000
- 「おおきく振りかぶって、は野球に対してまじめなのが良い」
書評
- 見つけたら入れてね
blog記事
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