おおきく振りかぶって 10巻

おおきく振りかぶって』10巻(アフタヌーンKC

ひぐちアサ

『おおきく振りかぶって』10巻は、アフタヌーンKCから刊行されている軽装版マンガ(コミックス本)。ひぐちアサ著の、高校野球を題材にした作品。

10巻では、9巻から描き出された、高校野球夏の埼玉大会3回戦、西浦高対埼玉高の試合が続く。西浦後攻の試合は2回の裏。
スクリューを決め球にする、埼玉高の2年生投手、市原豊は、自身も外野手からコンバートされた急造投手だったが、1年生捕手、佐倉大地の読みの浅さに、負担を意識していた。
一方、西浦側では、田島に対する対抗心を空回りさせる花井が、プレッシャーで煮詰まっていく。モモカンは、そんな様子に気づきながらも“何かをつかんで”と、あえて、花井を放置していくのだった。

  • 『おおきく振りかぶって』アフタヌーンKC版 第10巻は、2008年刊行。
  • 採録エピソードは、雑誌月刊「アフタヌーン」2006年9月号〜2006年12月号掲載分がメイン。
    • 第18回「3回戦」
      (10巻がまるまる、第18回「3回戦」にあてられた構成)
    • その他=カバーを外すと、表1と表4に、おまけマンガ「大地少年」が刷られてるらしい(あらゆる刷で共通かは不明)

用語や登場人物

第18回「3回戦」

エピソードタイトル「3回戦」は、夏の高校野球埼玉大会3回戦のこと。埼玉高校対西浦高校の試合が、9巻から引き続き描かれる。
10巻で描かれるのは、2回の裏から試合決着まで。コールド勝を狙い、作戦を立てて試合に臨んでいる西浦チームだが。

巣山尚治
西浦高校野球部員。対埼玉戦ではショートで、打順5番。
エピソード第18回では、冒頭に阿部が回想する直前のベンチのシーンに登場。実際の巣山の打席は、エピソード第17回(9巻)の最後だったが、あまり詳細には描かれなかった。
  • 巣山は、対埼玉戦、3回の裏、4人めの打席で、センター前ヒットを打ち出塁。これで西浦は一死満塁に。
阿部隆也
阿部は、対埼玉戦、2回の裏で、西浦最初の打席に立つ。前打席、1回の裏最後の打席に立った巣山が、ベンチに戻ってからモモカンにしていた報告を思い出す阿部。“5回で終わらせるのにスクリュー攻略してるヒマねーし/早いカウントから打っていくぞ!”と、バットを構える。
“組み立ては投手がしてるんだろうけど/一球一球投手に首振らせスギ/投手にもうちょっと楽させてやれよ”と、佐倉のキャッチの未熟さから単調になりがちな埼玉バッテリーの配球を読み、センター前ヒットで無死一塁に。
  • 阿部は、対埼玉戦、3回の裏、5人めの打席に立つ直前、ベンチのモモカンに“待つ”“四球”のサインを出し、押し出し狙いの許可を求める。モモカンは色々考えるが、“ツーストライクまでやらせてみるか!”と了解。阿部は、1球めのボールは見送りながら“アホだな/自分の首絞めて”と思い、2球めは投手がモーションに入ったところでバントの構えだけみせ、ボールを誘う。
    3球めもボールで阿部はすんなり見送り。阿部は(水谷ン時とパターン同じだよ/これがこいつの“ストライクを入れる度胸”の限界なんだ/それでもストライクを要求してやりゃ投げられんのに)、と思い(こいつはその辺まるで役立たずだ)と、佐倉をみる。「栄口」と三塁走者に声をかけ、撹乱用のダミーサインを出す阿部。栄えは“? 何のサインにもなってないけど”と迷いながら「了解」のサインを返し“で いーのかな?”と考える。
    阿部の思惑通り、埼玉バッテリーは四死球を出してしまい、西浦は押し出しの1点をゲットする。これでスコアは、0-4に。
市原豊
埼玉高校野球部員。夏大会の時点で2年生、正投手。
変化の大きいスクリューボールを投げる。
1年生捕手の佐倉大地をリードしようとしているが、素質はともかく経験が浅い佐倉をリードしきれずにいる感じ。
3回の裏、西浦2人めの打者(沖)で、阿部の二盗を許した時など、佐倉のことを“その試合中しか注意の記憶もたねェもんなァ”、“気ィ抜かなきゃ盗塁0にだってできんだろーにさ!”と思う。
3回の裏、西浦3人めの打者(水谷)を迎える市原は、スクイズ狙いを警戒し考えすぎている内にノー・スリーに。捕手の佐倉から、これというサインも出ず、“もーいーから歩かせちゃおう!”と、フォアボールで水谷を一塁に進めてしまう。
  • 市原は、3年生主将、小山大樹の下級生に甘い態度を不満に感じている。3回の裏、打球を取りこぼし、ゲッツーのチャンスを逸した杉田に、小山が「いーよいーよしょーがない」と言うのを聞いて、(また……!)(“しょーがない”じゃなくてさあ/ダメだったとこ言ってやんなきゃいつまでも1年は覚えねーぞ)(3年がそれじゃあ全員がそうなっちゃうんだぞ/だからうち強くなんねーんだよ!)と思う。
  • 市原は、3回の表3番めの打席ではライトフライでアウト(ト書き的なネームで処理されている)。埼玉3回の攻撃は三者凡退で終わる。
  • 3回の裏、ピッチャーズマウンドに向かいながら、市原は“まじーな/点取られるペースはいつも通りだけど/こっちが全然打てねー”と思う。西浦ベンチに戻って行く三橋の後ろ姿をみるようにして“考えてみりゃあのピッチャー/桐青に勝ってんだもんな”と市原。“散々心構えしてたのに あのピッチャー見てると……”と、思うが、“イヤ/マグレはないだろ/うちが桐青とやったら100回中100回ボロ負けだ”と、考えを切り替える。
    3回の裏、西浦最初の打者(栄口)を迎えて、“とりあえず先頭切ろう/こいつさえ切っとけばあと有利に”、“運べんだから……/がんばれ!”と、自分に言い聞かせる市原。
  • 栄口に初級をヒットされた市原は、一塁手の沢村に「ヒットはいーよ!/イッチャン バッター勝負!」と声をかけられるが“また先頭出しちまった/次の3番がバントで4番で勝負か?/でも3番もさっき打ってるし……”と迷う。3番の泉が左打席に立つと、市原は少し動揺。一塁の沢村、外野の小山に視線を走らせる。沢村はグラブで口元をかくしながら「右だったよ」と補佐。小山は、声を出さずに「バントだよ、バ・ン・ト」と助言し、三塁手(杉田)にも「つっこめよ」と指示。
    実は泉が左打席に立ったのは、モモカンの指示で、送りバント狙いを匂わせ、甘い球を引き出そうとする策だったのだが、この場面では埼玉は見事にモモカンの作戦にはまった形に。
    • 泉にセンター前ヒットを打たれた市原が、“バントじゃなかった”と思いながら、チラリと三塁の方に目をやると、小山がヘラっと笑いながら“わりわり”というニュアンスで片掌を上げる。それを見た市原は“別にタイさんがわりーなんて思ってないけど”“3−0で負けてて/たぶん今日は大地が打たしてもらえねーのに/あんたなんでそんなヘラッとしてんだよ?”と思う。
  • 3回の裏西浦3人めの打者(花井)に向かいあう市原は、“桐青に勝ったチームの4番に/投手はじめて半年のオレがいくらいーボール投げてもねェ”と思ってしまう。“まあそれでも一番いい球”“投げるけど!!”と投球する球がヒットされ、“うわっ”と、振り返る市原。しかしこの打球は外野フライに捕られる。
  • 花井の次打席に立つ西浦の阿部は、埼玉バッテリーの四死球を投げさせ、押し出しの1点を得ようと画策。1球めのボールを見送ると、2球めは投球モーションに入ったところで構えだけバント。市原は、“クッソ/すんならしろよ”と思い、3球めもボールを投げてしまう。ここで、阿部は霍乱を狙って三塁上の走者(栄口)とダミーサインをやりとり。これが功を奏し、阿部は四死球で一塁に進塁。“野手あがりはモロイぜ/にしてもあの捕手はひでえ”“お前がそこに座っているいるイミ/半分もはたしてねーぞ!”と思いながら一塁に進む阿部。西浦は押し出しの追加点1点を獲得する。
阿部母
フルネームは、阿部美佐枝。西浦の対埼玉戦には、少し遅れて、2回の裏が始まる頃球場にやってくる。花井母に「阿部さーん/ちょうど息子だよ!」と迎えられる。
応援席に着くと、阿部母は、試合の前日、阿部隆也が、父親と埼玉の5番(佐倉大地)を敬遠すると言っていた話をする。
  • 阿部母が、三橋に声援を送った男を「アレうちのお父さん」と教えると、「えっ」と驚かれる。阿部母、すかさず「美女と野獣でしょ」と言い、花井母から「自分で美女言わない」と突っ込まれる。三橋母は笑いながら“阿部さんておもしろい人なんだー”と、思う。
西浦高野球部父母会
夏の埼玉大会開会式会場で、花井母と三橋母が相談し、呼びかけた父母会。まだ授業があり、応援席が寂しい対埼玉戦では、お母さんたちが誘いあわせで観戦、応援。
花井母
フルネームは、花井きく江。息子(花井梓)曰く「高校野球オタク」で、観戦慣れしている。阿部母とも相性がいい様子(笑)。
三橋母
フルネームは、三橋尚江。西浦の卒業生。
埼玉対西浦の3回戦のスタジアムには、父母会メンバーと共に応援に来ている。
野球のことはあまり良くわかっていない様子。阿部母が花井母に語る敬遠策の話を聞いても“ア……アレって阿部くんが決めてやるものなの? ってことかな?”と迷いながら「あの……やってましたよっ」と言葉を挟む。阿部母は「わっホントにやったんだ」と応え、「ヤジすごくなかった?……って」と、相手を三橋の母と気づき「スイマセンいつもウチのがスキカッテにやっちゃってて」と初対面の挨拶。三橋母は良くわからないまま「いえあの? こちこそ……」と応じる。
佐倉大地
埼玉高校野球部員。夏大会の時点で1年生、正捕手。
1年生としては立派な体格、見た目の印象もさわやか、野球も上手だしマジメ。しかし「モノスゲアタマワルイ」。これは、同じ野球部の上級生部員たちの一致した見解(9巻)。例えば、「バントの構えしてても盗塁はあるぞ」と、投手の市原から毎試合言われていても“その試合中しか注意の記憶もたねェもんなァ”と思われている。強肩なので、“気ィ抜かなきゃ盗塁0にだってできんだろーにさ!”と言うのが、市原の期待。
モモカン(百枝まりあ)
西浦野球部の若き女監督。夏大会時時点で23歳。
対埼玉戦2回の裏、モモカンは2番めの打席で左ボックスに立つ沖に、送りバントのサインを、一塁上の阿部に1球目で二盗のサインを出す。埼玉の過去の試合で佐倉が盗塁を許したのは、左打者だったとのデータを読んでの指示だ。
  • 2回の裏、2死二・三塁の局面で、打者一巡、5番めの打席に、打順1番の田島悠一郎が立つ。この時打席の田島は“打ちたい〜〜!!”と武者震い。ベンチのモモカンも“打たせたい〜〜!!”と思っているが、“でもダメ!/ケガ 悪化させてまで打たせる場面じゃない”と、セーフティーバントのサインを出す(西浦チームのエースバッタである田島は、1つ前の対桐青戦で、シンカー攻略のため無理のある打法を使い、手首を捻ったのだった)。
    • 田島のバントで、阿部は三塁からホームに生還。田島本人も一塁セーフに。
    • 水谷も二塁から三塁を回ってホームに向かうが、これは一塁からのバックホームに刺されてしまう。
  • ベンチに戻った水谷はモモカンに「……スンマセン」「サードが一塁に投げたから行けると思って」と報告、コーチズボックスに立っていた西広も「オレも/進めてしまいました」と言う。「今のはホーム行って正解だよ!」とモモカン、「サードからの送球前出てカットしたファーストがうまかったね」と、指摘。「さあ切りかえて!/しっかり守りましょ!」と気合を入れる。胸中“あんなプレーができるとなると/埼玉を甘くみていたかな!?”と思うモモカン。
  • 3回の裏、モモカンは、5人めの打席に立つ阿部が送ってくる“待つ”“四球”のサインを見て(もしかして/埼玉に“押し出し”をやらせたいの!?)“はえっ”と驚く。“そらまァ/埼玉は/桐青戦観てるのかスクイズ警戒してはずしてくるけど”“でもそれは一塁が空いてたからじゃないの?”“阿部君の後ろはもう心もとないからここで点入れときたいんだって……”“−−だけど/満塁で打てばゲッツーの可能性も高いのも確かかな”などと考えるモモカン。“………”“ツーストライクまでやらせてみるか!”と、了解のサインを出す。
沖一利
西浦高校の1年生で野球部員。対埼玉戦では、ライトで打順7番。
2回の裏2番めの打席に立つ沖は、ベンチのモモカンからのサインで、左打席で送りバント。埼玉の捕手、佐倉は、水谷の影になる阿部の盗塁スタートを見逃し、二盗を許してしまう。この後、沖はバントを決め、1死ランナー三塁に。
水谷文貴
西浦高校の1年生で野球部員。対埼玉戦では、レフトで打順8番。
2回の裏3番めの打席に立つ沖は、モモカンのサインで、スクイズ狙いの素振りを見せる。球を良く見てボールカウントを稼ぎ、フォアボールで出塁。西浦は1死ランナー、一・三塁に。
  • 2回の裏で、西浦は1点を加えた。しかし、コールド狙いの作戦を取っているため、ベンチに戻った水谷はモモカンに「……スンマセン」「サードが一塁に投げたから行けると思って」と、報告。「今のはホーム行って正解だよ!」とモモカン、「サードからの送球前出てカットしたファーストがうまかったね」と、指摘。「さあ切りかえて!/しっかり守りましょ!」と気合を入れる。
三橋廉
西浦高校の1年生で野球部員。正投手。対埼玉戦では打順9番。
2回の裏4番めの打席に立つ三橋は、モモカンのサインで、ヒッティングに出る。自分もコールド狙いに貢献したいと思う三橋は、低めを打たされる感じに。打球は外野の杉田亨が抑えるが、ボールを取りこぼしてしまう。三橋はぎりぎりで一塁アウトに。西浦は、二死、二・三塁に。
アウトに取られた三橋は、三塁の阿部を帰したかった、と思うが、その時西浦側の応援スタンドから野太い大声で「バッターナイスラン!!!」と声援がかかる(実は阿部の父)。
  • 3回の表から、裏にイニングチェンジするとき、埼玉の投手、市原は“考えてみりゃあのピッチャー/桐青に勝ってんだもんな”と、三橋がベンチに戻って行く後ろ姿をみながら思う。“散々心構えしてたのに あのピッチャー見てると……”と、思うが、“イヤ/マグレはないだろ/うちが桐青とやったら100回中100回ボロ負けだ”と、考えを切り替える市原。
阿部父
フルネームは、阿部隆。西浦対埼玉の3回戦で、スタンドからフィールドの三橋に大声で声援をかける場面で初登場。
父母会のお母さんたちから離れた席に一人で座っている阿部父を振り返り、三橋母が「……迫力ある声ねぇ」、花井母が「誰?」と言うと、「あのねェ/アレうちのお父さん」と阿部母。
阿部の父親は、給排水設備会社「阿部メンテナンス」の社長。3回戦の時も、仕事の合間に、時間をやりくりしてスタジアムに立ち寄ったらしい描写が観られる。
杉(杉田亨)
崎玉高校の野球部員。10巻カバー袖に添えられたプロフィールによれば、1年生。
対西浦戦ではサードを守っていたが、2回の裏、三橋の打球を取りこぼし、水谷に進類を許すも、一塁に送球し三橋をアウトに。
埼玉の小山大樹が、杉田にフォローも入れようとタイムを取ると、「スンマセン/ゲッツーのこと考えてあせったかも……」と侘びる。
小山大樹
埼玉高校の野球部員。西浦と3回戦で戦う夏大会では、チームでただ1人の3年生。遊撃手でキャプテン。
対西浦戦の2回の裏、三橋の打席が終わり、2死二・三塁になった時点で、杉田にフォローも入れようとタイムを取る。ボールの取りこぼしのことを「あせったかも」と侘びる小山に「いーよいーよしょーがない」と応じるが、こうした態度にピッチャーの市原豊は不満を募らせていく。しかし、この時小山はまだ市原の不満に気づかずにいる。
田島悠一郎
西浦高校の1年生で野球部員。関係者の誰もが認めるエースプレイヤー。
1つ前の対桐青戦で、シンカー攻略のため無理のある打法を使い、手首を捻った。そのため、対埼玉戦ではファーストで打順1番(普段はサード、4番)。控え投手でもある。
対埼玉戦、打者一巡で2回の裏5番めの打席に立つ田島。2死二・三塁の局面で、打ちたい、と武者震いするが、ベンチのモモカンからのサインは、セーフティーバント。
3塁から阿部がホームに帰るが、水谷は一塁からホームへの返球で刺される。
  • 3回の裏、ベンチ前に出ていた田島は、外野フライで打球を捕られ戻ってくる花井に「おしーおしー」と声をかけるが、無反応な様子でベンチに戻っていく花井を、不審気に見送る。
沢(沢村真人)
埼玉高校の野球部員。西浦と3回戦で戦う夏大会では、2年生で一塁手。
2回の裏、サードからの送球を前に出てカット。田島は一塁セーフになるが、捕手の佐倉の指示で、すかさずホームに送球、三塁から回った水谷をアウトにとってスリーアウト。西浦側ベンチで、この時の沢のプレイを「うまかった」と評すモモカンは、胸中“あんなプレーができるとなると/埼玉を甘くみていたかな!?”と思う。
  • 沢村は、3回の表2番めの打席ではサードゴロでアウト(ト書き的なネームで処理されている)。
西広辰太郎
西浦高校の1年生で野球部員。中学時代は陸上部に属していて運動神経は良い。野球初心者なので、3回戦では補欠。ベンチからの伝令役などをしていく。
2回の裏、三塁側コーチズボックスに立った西広は、イニングチェンジでベンチに戻ると、ホームでアウトに刺された水谷と共に、モモカンに「オレも進めてしまいました」と報告。モモカンには、今のは「ホームに行って正解だよ」と言われる。
原田(原田玲一)
埼玉高校野球部員。対西浦の夏大会の時点では、2年生。
原田は、3回戦、3回の表最初の打席ではショートゴロでアウト(ト書き的なネームで処理されている)。
栄口勇人
西浦高校の1年生で野球部員。副主将。対埼玉戦ではセカンドで、打順は2番。
対埼玉戦、3回の裏、最初の打席に立つ栄口は“犠打以外なのは久しぶりー!”と、やる気充実。埼玉の投手、市原も、先頭を切ろうと狙うが、1打席めで球は観ていた栄口は、低めの初球をヒットして二塁に進塁。
泉孝介
西浦高校の1年生で野球部員。対埼玉戦ではサードで、打順は3番。
対埼玉戦、3回の裏、2人めの打席で、泉は左打席に立つ(前打席は右)。埼玉側は、送りバントを予想するが、泉は初級を絶好球とみて、センター前ヒットに。西浦は、無死一・二塁に。
実は泉が左打席に立ったのは、モモカンの指示で、バント狙いを匂わせ、甘い球を引き出そうとする策だったのだが、この場面では埼玉は見事にモモカンの作戦にはまった形に。
花井梓
西浦高校の1年生で野球部員。野球部主将。対埼玉戦ではセンターで、打順は4番。
対埼玉戦、3回の裏、3人めの打席で、花井はベンチからの「打て」のサインを受け“ここで打って点入れんのが4番なんだろ!”と思い、一類コーチズボックスにいる田島の方を見て“なあ田島!”と思うが、はっとして首を振ると、“田島はカンケーねーだろ!!”と思いなおす。“モモカンは/オレが打てると思ったから打てっつったんだ!!”。
花井は初球を打つが、これは外野フライに捕られてしまう。しょげた感じでベンチに戻る花井だが、“しっかりしろ−−っ/試合中だぞ! お前キャプテンだろ!! 自分のことだけ考えるなんて/何をよゆーぶっこいてんのよ”と、自ら気分を変えようとする。しかし、巣山のセンター前ヒットを見て“4番のクセに/オレ何やってんだ……”“じゃねェつってんだろ!!”など、混乱気味に思考が巡っていく。

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