おおきく振りかぶって 3巻

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おおきく振りかぶって』3巻(アフタヌーンKC

ひぐちアサ

『おおきく振りかぶって』3巻は、アフタヌーンKCから刊行されている軽装版マンガ(コミックス本)。ひぐちアサ著の、高校野球を題材にした作品。

3巻では、2巻終盤から描かれだした、シニア時代の阿部の回想譚が断続。さらに、夏大会準備に本格的に取り組む西浦高野球部の様子が描かれ、花井が主将に選ばれる。

他に、外伝的読みきり『基本のキホン!』(58頁)も採録。

  • 『おおきく振りかぶって』アフタヌーンKC版 第3巻は、2005年刊行。
  • 採録エピソードは、雑誌月刊「アフタヌーン」2003年6月号に掲載された『基本のキホン!』、及び2004年8月号〜10月号掲載分の本編がメイン。
    • 第7回「スゴイ投手・1」
    • おまけ(1)「マネジのとくぎ」
    • 第8回「スゴイ投手・2」
    • 第9回「ちゃくちゃくと」
    • おまけ(2)設定集及び「おお振りの誕生するまで」
    • 基本のキホン!
    • 巻末に1頁の「次巻予告」も

用語や登場人物

第7回「スゴイ投手・1」、第8回「スゴイ投手・2」

GW最終日、練習の一環として埼玉県春大会の試合観戦に野球場まで行った西浦野球部。客席には、春日部市立の野球部や、桐青高の部員、さらに偵察らしいビデオを携えた人影なども見られる。観戦しながら、阿部は、武蔵野第一の速球投手榛名元希のことを、何故、「最低(な投手)」と呼ぶか、栄口と三橋に語るが。

モモカン(百枝まりあ)
本名、百枝まりあ。西浦に昔あった軟式野球部のOGで、新生硬式野球部の若き女監督。3巻巻頭のエピソード第7回では、部員を引き連れてきた春大会の観戦(第2巻末尾からの続き)をゲーム形式にする。賞品(及び罰ゲーム)をつけ、3回までじっくり試合を観たところで、その後の対戦両チームの得点を予想する、というゲームだ。
おそらく、野球経験にも、野球への意識にもバラつきのある部員たちを、意識を高める方向に、楽しみながら底上げしよう、といった狙いと思える。
  • モモカンは、あふれる熱意、技術、野球センスなどで、部員たちをしっかり掌握。さらに、経験に裏打ちされた指導力で、入部前は「女の監督なんかありえねー」と言っていた花井(1巻、第1回)も、すっかり信頼するように。
    エピソード第9回では、「操縦がムズカシー類(花井談)」の田島を、うまく誘導し続ける様子に、花井は「あの女の性格は才能だ」とも(笑)。
武蔵野第一高校
作中の埼玉県では、サッカーの強い高校として知られ、野球では無名だった。西浦の新生野球部が活動を開始した年の前年度秋大会から躍進。
浦和総合学園
作中の埼玉県では、野球の強い高校として知られている。過去に何度か甲子園に進出したことがある。
春日部市立高校
作中の埼玉県で、近年勢いがあると言われる公立校。野球部は、部員数100人を超える大所帯。
西浦の新生野球部が活動を開始した年の前年度、秋大会で武蔵野第一と当たり、4回からリリーフした榛名から得点出来ず敗退した。
西浦チームが観戦に出向く、浦和総合対武蔵野第一の試合を観戦に来ている。
2年に、鈴木葵、涼の双子のバッテリーがいる。
桐青高校
作中の埼玉県では、野球の強豪高として知られる。西浦に新生野球部が発足する前年度、夏の甲子園へ出場。キリスト教系の私立中高一貫校。
桐青の監督は、春大会では武蔵野第一は浦和総合に負けると予想、夏大会のために、正捕手の河合、正投手の高瀬、控え投手の仲沢利央の3人を、春大海での浦和総合対武蔵野第一の試合観戦に出していた(同じ試合を西浦チームも観戦している)。
河合和己
桐青高校3年。物語内の今時点で、野球部主将で正捕手。
河合は、高瀬に「オレも今ンとこ榛名はイロモノだと思ってる」と語る。しかし続けて「今年はイロモノでも/来年どうなるかわかんねェぞ!」と脅すようなことも言う。
高瀬準太
桐青高野球部員。2年生の正投手。
榛名元希
阿部や三橋たちより1学年上のキャラクター。中学時代、阿部も属した関東ベスト16に入るシニアチームに途中参加。ピッチャーとして阿部とバッテリーを組んでいた。本編、物語内の今では、武蔵第一高校の野球部を躍進させた投手として、かなり注目されている。
実力のある速球投手である榛名は、一試合で厳密に80球しかなげない、など、ワガママとも言える姿勢を、周囲に認めさせている。春大会の公式戦である対浦和総合戦でも、4回からしか登板しない(3回までは、上級生の加具山が登板)。そんな榛名のことを、西浦の阿部は「最低の投手」と呼ぶが。
  • 実は、中学野球部で、未熟な監督の指導で半月板を損傷。しかも、故障後は使い捨てるように相手にされなくなり、一時荒れていた(この間の事情は番外編『基本のキホン!』に詳しいが、本編では、まず、阿部の口から概略が語られる)
仲沢利央
桐青高野球部1年生。控え捕手。
浦和総合対武蔵野第一の試合に4回の表から登板する榛名の投球をみて、利央は「ふつうっすね」と言うが、「お前/榛名になんかあんのか?」と河合に訊かれる。横から高瀬が口を挟み、美丞大狭山狭山で野球部コーチをしている兄(仲沢呂佳)が、利央を無視したのに、榛名にはスカウトの声をかけた、とバラす。
三橋廉
新生西浦野球部のエース・ピッチャー。チームで試合観戦に行った、春大会、浦和総合対武蔵野第一の試合で、阿部が中学時代組んでいた「スゴイ投手」榛名の速球ストレートを見る。自分のヘロ球と比べ、愕然とする三橋は、“コントロールがいくらよくても/変化球がいくつあっても/この速球の魅力とは比べものにならない”と、思う。あんなスゴイ投手を知ってる阿部君は、自分が気持ちよく投げれるようにほめてくれたんだ、とも思い、その気持ちだけもらって、投げさせてもらえるなら一生懸命投げよう、と思う。
さらに阿部本人の口から、シニア時代の榛名のことを聞き、(阿部君が榛名サンを許せないのは/“チームのエース”としてじゃない/“自分のエース”として−−だよ)と、直感する。“阿部君は榛名さんに/ちゃんとこっちを向いてほしかったんだ”、“榛名サンと/ちゃんとバッテリーになりたかったんだ”、“プロになってからじゃなく/阿部君とと 今やってる野球を/大事にしてほしかったんだ”と、直感する。
阿部隆也
新生西浦野球部の正捕手。チームで試合観戦に行った浦和総合対武蔵野戦のスタジアムで、栄口から榛名のことを聞かれ「あいつは最低の投手だよ」と言う。組んでいた人のことをそんな言い方されると、今組んでる者としては気になる、と栄口に言われた阿部は、「そうなのか?」と、シニア時代の榛名のことを、栄口、三橋に話して聞かせる。
阿部は、プロを目指している榛名のことを、俺たちとは違う次元で野球をしている、すごい奴だとは認めるがチームメイトとしては最低だとも、語る。
ゲンミツに
阿部が、三橋らに聞かせる榛名の話「一試合で厳密に80球しか投げない」を聞きつけた田島が「ゲンミツってなんだっけ」と尋ねる。阿部は何の気なしに「絶対」ってことだよと言い換えて説明。勉強の成績はよくない田島は、そうか、とそれ以来「絶対に」の意味で「ゲンミツに」を使うようになる(笑)。「グンミツに勝つ!」とか。本人は、語感か何かが、結構、気に入ったらしい。
秋丸恭平
武蔵野第一の野球部員。榛名と同学年で、中学野球部も一緒だった。故障を原因に荒んでいた榛名に、シニアに入るよう進めたチームメイトの1人。武蔵野では控え捕手をしている。
シニア時代も榛名に面と向かって「最低」と言っていた阿部の名前は、榛名から聞いていた。球場で、阿部を見かけた榛名が、奴は生意気なんだ、と言うのを聞きながら、秋丸は、榛名には自分が荒れてた頃のことなんか早く忘れてほしい、と考える。同時に、まだ荒みから立ち直る時期にあった榛名を「最低」と言いながらバッテリーを組んでいた阿部に、内心で感謝するのだった。

第9回「ちゃくちゃくと」

ある日の練習前、モモカンは部員たちを前にして「うちもだいぶチームとして形になってきたけど/勝ち上がるためにはまだ足りないものがあるよね」と語り、「まず/何が欲しい?」と訊ねる。

花井梓
西浦の新生野球部員。3巻では、夏大会目指して本格始動を目指すモモカン(百枝まりあ)の指示で、沖と共に控え投手になる。基本ポジションは、外野手、打順も上位で4番を田島と争う感じになっていく。
さらに、主将も決めようというモモカンの言葉に、部員全員一致で主将に推薦される。モモカンも同意してすんなり就任。推された理由は、次のようなもの。
「同じ学年だけだから/ちゃんと注意とかできるヤツがいいな」、「そんで監督にもモノが言えて」、「一生懸命なんだけど」、「一人で空回っちゃわないヤツ」、「縁の下の力持ちをやってもくさらずにいれる自信をもってて」、「下の者を放っておけない/ムシロ放っておくほうがストレスになるような−−……」。部員メンバーたちが、特に相談もなくそれぞれに似たようなことを考える感じの描写で、全員の視線が花井に集まっていく。
沖一利
西浦の新生野球部員。基本ポジションは、一塁手。中学時代は、野球部で2年まで投手経験もあった。サウスポー投手だったが、3年の時は一塁手に専念。野球部本格始動を目指すモモカンから、花井と共に控え投手に指名される。内心では一瞬、“性格的に向いてない”と躊躇するが、すぐに“ンなこと言ってるヨユーこのチームにはないんだよな”と、気を引き締め、受ける。
田島悠一郎
西浦の新生野球部員。基本ポジションは、三塁手。モモカンも部員たちも認める、西浦のナンバー1選手。
モモカンから、花井、沖と組む控え捕手に指名されると、はじめは「あんま興味ないっすネー」。サードは、一番強い球が飛んでくるから面白い、と言う田島だが、モモカンから「キャッチは、サードよりも強い球が来るし、捕球は難しいけど捕れると気持ちいい」と聞かされ、あっさりと「おれキャッチャーやるわ」(笑)。
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