BILLY BAT
BILLY BAT
作、浦沢直樹、ストーリー共同制作長崎尚志のマンガ。雑誌「モーニング」(講談社)にて、2008年から連載が開始された。
単行本コミックは、2009年6月に1巻が刊行された。
物語は、1949年頃アメリカで描かれたとの設定のコミックス“BILLY BAT”の物語内物語から始まる。
コミック・アーティストの日系米人(2世)、ケヴィン・ヤマガタは、コミックス“BILLY BAT”で、「宝くじにあたるような」ヒットを得た。
しかし、自分の描くキャラと、瓜二つなキャラを主人公にした漫画を日本でみたと、偶然聞くと、真相を確かめに占領下の日本に向かう。
その後、物語は、紀元前後のイスラエル地域、1950年代末のアメリカ(合衆国)、天正伊賀の乱頃の戦国日本と時代も舞台も飛びながら、コウモリのキャラクターが関わる出来事が描かれていく。
用語や登場人物
キャラクター
- CIAのスミス
- 第6話で、行方不明になったチャーリー・イシヅカの行方を捜している、と言ってケヴィンの前に現れる。スミスは、特別検閲官のフィーニー大尉と共に、OSSの建物でケヴィンを尋問する。
- スミスは、第10話で、フィーニー大尉の下を訪れ、下山事件の重要容疑者の似顔絵を示すと「あんたの部下そっくりだろ」と言い、ケヴィンの名を出すが、フィーニーは「彼のことは来たばかりでよく知らないんだ」と応える。
- ビリーバット(BILLY BAT)
- ケヴィン・ヤマガタが創作したコミックスのキャラクター。私立探偵の役で、コートを着ている。
- ビリーバット(BILLY BAT)は、第6話でケヴィンの夢の内に顕われ、第12話で暗渠を逃げるケヴィンの前に姿を顕す。
- 大貫巡査部長
- 第10話に登場し、警察署での唐麻雑風の事情聴取を担当する刑事。雑風は、横須賀にある、米軍将校ハウスとして接収されている洋館の外壁にコウモリの漫画を落描きした、と訴えられていた様子。
- 大貫巡査部長は、唐麻雑風の身柄を引き渡すよう求めて警察署に現れるフィーニー大尉の言動に不審を抱く。そして、ケヴィンに唐麻雑風からの伝言「アメリカへ戻れ」を伝えることになる。
- 空手チョップの男
- ケヴィンが唐麻雑風から託された、こうもり小僧の漫画原稿に登場するキャラクター。読者に向けて掲載されたパートでは、漫画原稿の終盤にシルエットのように描かれた形で登場。漫画の末尾で、空手チョップの男は、追撃してきたこうもり小僧に「今日のところはおまえを生かしておいてやろう」「お前とはもっと大きな事件で戦わねばならないからだ」と告げ、「アメリカに来ればわかる さらばだ!!」と、姿を消す。この原稿を読んだシズちゃんは、話が「終わってないじゃん」とケヴィンに言う。
- 唐麻雑風
- 元紙芝居屋だった。2次大戦後の焼け跡の東京で、これからは漫画の時代だと、漫画家に転向。『こうもり小僧の大冒険』など、こうもり小僧を主人公にした作品を描いている。紙芝居屋の間では「北千住の先生」と呼ばれている様子。ガード下の柱に、コウモリの絵を描いたとされる人物。
- 第6話の終盤、唐麻雑風は、自宅に訪れたケヴィンが「先生の真似をしてしまいました!!」と、キャラクターデザインの盗用の件で頭を下げられるが。雑風はケヴィンに、「どっちだ?」「君の見たコウモリは白か黒か?」「いいもんかね 悪もんかね?」と訊く。
後、雑風は、ケヴィンに「黒の言うことを聞くな!」「そのうち使命が下る!」とも語る。 - しかし雑風は、「この原稿をもってそこから逃げたまへ」という書置きと、こうもり小僧の漫画原稿を残してケヴィンの前から姿を消す。
- 第10話に再登場する唐麻雑風は、警察署で大貫巡査部長に事情聴取を受けている。罪状は、横須賀で米軍の将校用ハウスとして摂取されている洋館の外壁に、コウモリの落書きを描いたというもの。「なんであんなことしたの?」と訊く巡査部長に、唐麻雑風は答えず、「終わっていなかったんだ……」とつぶやく。
- 来栖
- ケヴィンがチャーリーの屍体の傍で意識を取り戻した時、少し後に姿を現す男(第5話)。ケヴィンに「東亜細亜興産」の来栖、と名乗る。
ケヴィンは闇市の飲み屋の主人に、酔ってチャーリーを殺した、と聞かされ、泣きながら、MPに出頭し罪をつぐなわなくちゃ、と言う。しかし、来栖はそんなことをされては、このあたりの闇市は占領当局に取り潰される、と語り、チャーリーの屍体を鉄道線路に投げ込み轢死体にするよう、ケヴィンをそそのかす。 - ケヴィン・ヤマガタ
- 日系アメリカ人の、コミック・アーティスト(マンガ家)。日本語名、山縣金持(やまがた・きんじ)。1949年頃、2次大戦後のアメリカで、“BILLY BAT”のコミックスを発表して人気マンガ家に。しかし、向かいのアパートの一室を監視させろ、と突然仕事場にやって来る刑事から、ビリーバットとそっくりのキャラクターが描かれた漫画を日本で観た、と聞かされ渡日。ケヴィンは、戦後の日本で『黒蝙蝠写本』を眼にする。
- ケヴィンは、さらに焼け跡の東京のガード下で、コンクリの柱に描かれたコウモリのキャラクターの落書きにめぐり合い、自分が進駐軍の兵士として東京に赴任していた数年前、落書きを眼にしていたことを思い出す。意図してなかったとはいえ、キャラクターデザインを盗用した、と思いつめるケヴィンは、柱に落書きを描いた人物、唐麻雑風に会いに、雑風の仕事場を訪れるが。
- ケヴィンは、雑風が書き残した書置きに従い、こうもり小僧の漫画原稿を抱いて逃亡者のような行動をとる。安旅館を転々とするケヴィンだが、雑風がコウモリのキャラクターを使って描いた物語が、下山事件を予言したもののように思えてならない。「先生は預言者ですか……?」と呟くケヴィン。思い余って漫画原稿の終盤の舞台になる日本橋四丁目の交差点に行くケヴィンは、唐麻雑風に託された漫画原稿で、こうもり小僧が踏み込むビルとそっくりな建物をみつける。
- コウモリのキャラクター
- 『BILLY BAT』の作中には、様々な物語のレベルに渡って、同系と思えるコウモリのキャラクターが多数登場する。ビリーバットも、そうしたキャラクターの一類になっている。
- ケヴィン・ヤマガタのビリーバット(BILLY BAT)=1949年頃、ケヴィン・ヤマガタが創作したコミックスの主人公キャラ。私立探偵役で、コートを着ていて「ニヒルな目つき」をしている。
- ケヴィンは東京でガード下のコンクリ柱に描かれたコウモリの落書きを観て、数年前、自分が同じ落書きを観たときのことも思い出す。その直後、ケヴィンは、コンクリ柱の落書きから抜け出したコウモリのキャラクターが、コートを着込むと、ビリーバットとして語りかけてくる夢を視る。この夢では、後から同じ姿のコウモリのキャラクターがもう1体顕れ、キャラクターデザインの盗用について口論。取っ組み合いをすると後からきた方が先にいた方を打ち倒す(と、思われる)。
- ケヴィンは、ビリーバットのキャラクターと、第12話末から第13話にかけて白昼の幻覚のようにして対面する。
- こうもり小僧=唐麻雑風が、自作の漫画に描く主人公格のキャラクター。2次大戦後すぐに出された『こうもり小僧の大冒険』は、「けっこうな数が売れた」らしい。
- 白州次郎
- 第9話で初登場。おそらく、歴史上実在した白洲次郎がイメージソースと思われるが、モデルと言えるほど、史実を踏襲された描写になるかどうかは、とりあえず不確定。
- 第7話で銀座四丁目のビルで来栖をみかけるケヴィンは、第8話で連れ込まれ、第9話で殺されそうな雰囲気になる。そこに、突然現われるのが白洲次郎。白洲は、来栖にケヴィンのことを「古い友人だ」と言うと、ビルの外までケヴィンを連れ出し、逃がしてやる。礼を言われると「礼なんかより走れ/ここから先は自分で生きのびろ/できる限りの速さで走れ」と告げる。
- シズちゃん
- 最初は、名前もわからない一街娼として登場。来栖のそそのかしに乗って、チャーリーの屍体を遺棄したケヴィンが、良心の呵責を紛らわせるように、したたかに酔っているところに声をかけてくる。自分のことを「生きる資格もない」と言うケヴィンに、シズちゃんは「どんな理由があったって……/死んだらだめだよ」と言う。ケヴィンは、シズちゃんによって、コウモリの落書きがコンクリの柱に描かれたガード下に引っ張って行かれる。
- 第9話で、コウモリの絵が描かれたガード下にいるシズちゃんは、銀座四丁目のビルから逃れてきたケヴィンと、半ば偶然のようにして再会。そのままケヴィンを自分の住む安アパートに匿ってやることに。
- 下山総裁
- 当時の国鉄総裁。歴史上の実在人物がモデルになっている。
- チャーリー・イシヅカ
- ケヴィンの友人(幼馴染らしい)日系米人。1949年の東京でGHQに勤務、ケヴィンが渡日した頃は通訳をしていて、下山総裁の通訳などを勤めている。チャーリーは、OSS(戦略諜報局)にかき集められた古文書の山の内から発見。ケヴィンのビリーバット(BILLY BAT)は日本の古典から盗用したキャラクターデザインだという趣旨の脅しをかけ、金銭をゆすろうとする。しかし、第4話で、ケヴィンが意識を取り戻すと、傍にチャーリーの変死体が横たわっている。
- フィーニー大尉
- ケヴィン・ヤマガタの前に、CIAのスミスと共に現れ、スミスが、特別検閲官のフィーニー大尉と紹介。OSSの建物でのスミスのケヴィン尋問に立ち会う。しかし、スミスが、チャーリー・イシヅカの行方を捜査しているのに対し、フィーニー大尉は、チャーリーがOSSの建物から持ち出した古文書(「黒蝙蝠写本」)の行方を知らないか、とケヴィンに訊く。
- 第10話で、フィーニーはCIAのスミスに訪ねられ、下山事件の重要容疑者の似顔絵としてケヴィンの似顔を示めされ「あんたの部下そっくりだろ」と言われるが、「彼のことは来たばかりでよく知らないんだ」と応える。
- 第11話に登場するフィーニーは、唐麻雑風が取調べを受けていた警察署に現れ「GHQの特別検閲官」と名乗り、唐麻雑風の身柄引き渡しを求める。応対する大貫巡査部長は「ただの落書き」で釈放したと言うが、フィーニーは「その男はスパイの可能性があるのでアメリカ軍が取り調べねばならない」と、強引に唱える。
- キャラクター
- 解説
ガジェット(小道具)
- コウモリの図像
- 『BILLY BAT』の作中には、作中にしばしば、同系と思えるコウモリの図像登場する。時として、コウモリの図像から、コウモリのキャラクターが抜け出すように顕れる様子も描かれる。
- 黒蝙蝠=「黒蝙蝠」は、作中まず、日本が生まれる前から存在する秘密結社のシンボルマークとして、チャーリー・イシヅカがケヴィンに語る話題で言及される。次に、ある日本人が体に掘り込んだ刺青の意匠として言及される(いずれも第3話)。ついで第4話では、チャーリーが発見される『黒蝙蝠写本』内に描かれた図像として登場(第4話)。
- ガード下の落書き=シズちゃんが「あたしたちは死ぬほどつらい時にはここに来るんだ」と、ケヴィンを引っ張っていくガード下で、コンクリ柱の上部に描かれた落書き。シズちゃん曰く「この神さまに祈るんだ そうすりゃ生きる気になるんだ」。
- ケヴィンは、数年前、進駐軍の兵士として東京に赴任した時、同じコウモリの落書きを垣間見ていた。退役して帰米した後、東京での記憶を忘れたまま、新たに“創作”したのがビリーバットのキャラクターだった。
- 月面のコウモリ=
- 『黒蝙蝠写本』
- 占領米軍の一部が、探していた古文書。エピソード第4話「コウモリの古文書」で、チャーリーが、OSS(戦略諜報局)にかき集められた古文書の山の内から発見。チャーリーの話では、占領米軍の内部に、コウモリのマークをシンボルにした古い秘密結社の手がかりとして、古文書を追い求めている部門があるらしい。通訳をやっていたチャーリーは『黒蝙蝠写本』が、それだと考える。
- チャーリーが変死した後、『黒蝙蝠写本』の行方はわからなくなる。
- ガジェット
- 解説
用語
- 日本復興財団
- 来栖が、日本橋のビルで運営している「サロン」の運営団体らしい。来栖が、ケヴィン・ヤマガタに語るところでは「旧大蔵省の外郭団体」。かなりの量の金塊を保有していて、来栖はそれをケヴィンに見せて「誰のためにどのように使うか」使い方を訊ねる。
- 用語
- 解説
物語内物語
『BILLY BAT』の作中では、種々の物語内物語が描かれ、複雑な綾なしをみせている。
- “BILLY BAT”KEVIN YAMAGATA
- ケヴィン・ヤマガタが創作し、1949年頃のアメリカで人気タイトルになったコミックス。絵柄としては、アニマル・カトゥーン調だが、主人公のビリーバット(BILLY BAT)は私立探偵で、ハードボイルド調のテイストももっている。
- コミックス第1巻の関東には、ケヴィンの“BILLY BAT”、“DREALY NIGHT MURDERS(やるせない夜の殺人)”と“A SINCERE NIGHT(真実の夜)”とが掲載されている。これらは、それぞれ浦沢直樹の『BILLY BAT』の第1話と第2話に相当。ただし、第2話“A SINCERE NIGHT”途中から、描きかけのマンガ原稿の結末に不満を感じるケヴィン・ヤマガタの描写に移っていく。
- 『テキサス捕物帖 ピストル・ヘアー荒野を行く』
- ケヴィン・ヤマガタが“BILLY BAT”をヒットさせる前に描いたコミックス。作中では、第3話のチャーリー・イシヅカとケヴィンとの会話内で言及されるのが初出。
- 『こうもり小僧の大冒険』
- 唐麻雑風が、訪ねてきたケヴィンに、見せる漫画単行本。第2話で、刑事が、ケヴィンに日本で見たと語ったのは、多分この漫画らしい。「戦後すぐに出した赤本」で「けっこうな数が売れたよ」と雑風。
- (「赤本」は、この場合、「男子児童向けの本」のことだろう)
- ケヴィンに託される唐麻雑風の原稿
- 物語り内物語
- 解説
関連する用語
- 赤本、赤本漫画
- 解説
- 関連する用語
- 解説
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