ローゼンメイデン・オーベルテューレ

2006年12月末に(前後編で)TV放送され、DVDにもなった作品。

時期的にはトロイメントの頃。真紅の回想から始まる、真紅と水銀燈の因縁のお話。原作にはない完全オリジナル。

主人公を水銀燈に置いた作品。水銀燈がなぜ今のようなドールになったのか、第1期で水銀燈の胴体が欠けていたのはなぜなのかが明かされる。水銀燈の性格が今と違って気弱なので新たな一面を見る事ができる。また、真紅らがトロイメントのときとは若干違う性格だったりと、時間の経過(舞台は19世紀)を感じさせるつくりになっている。

作品の評価については意見が分かれているのが現状。過去とはいえ水銀燈や真紅などドールの性格があまりに違いすぎる事、全体的に暗くギャグシーンやほのぼのとした展開がほとんどないために、第1期や第2期とは完全に別作品として低評価する人も少なくない。2話と少ないために時間的に駆け足で話が進んでいっている印象も受ける。ただ、水銀燈を主役に置いたことでいつもとは違った角度から作品を楽しむ事ができ、アニメ一期で謎だった伏線を回収していた点は評価できる。

また、この作品で真紅の株が下がり、水銀燈の株が上がったとする(実際にネットなどで真紅を非難した人も多い)のは早計である。水銀燈=可哀相、真紅=悪者という単純な図式にはならない。もちろん真紅に悪い面があり水銀燈を今のような性格にしてまった原因があるのは否めないが、水銀燈にも非はあった。真紅は完璧主義が度が過ぎて水銀燈をローゼンメイデンと認めなかった事、偽善を徹底的にやらなかった点に問題がある。水銀燈はローゼンと真紅にしか心のより所がなかった点、真紅にローゼンメイデンと認めてもらえなかっただけで(真紅と一緒に暮らした事を忘れ)性格が180度豹変し、逆恨み的に真紅のブローチを破壊した事が挙げられる。ローゼンも水銀燈を不完全なまま放置し、後になってまるでおまけのようにローザミスティカを与えた点も真紅と水銀燈の因縁の原因を作った一人といえる。そもそも蒼星石が無抵抗の水銀燈を斬らなければ、確執は生まれなかったという見方もでき、複雑な条件で起こってしまった悲劇と言うほかない。このように誰が悪で誰が善かということは見方によって違うため、安易にどちらが悪いか決めつけるのは野暮な事であると言わざるを得ない。

作品全体についてはローゼンメイデンをどうぞ。

用語や登場人物

水銀燈(すいぎんとう)
ローゼンメイデン第一ドール。現在の性格とは大きく違い気弱で病的な性格。だが、お父様=ローゼンへの敬慕はこの頃から変わらない。不意に真紅とサラの前に現れる。
真紅(しんく)
ローゼンメイデン第五ドール。サラをミーディアムとしている。今より完璧主義に度が過ぎており、水銀燈にもそれを求めてしまった事が悲劇を招いてしまう。猫嫌いはおそらくこの時からのようだ。
蒼星石(そうせいせき)
ローゼンメイデン第四ドール。水銀燈がローゼンメイデンだと知ると無抵抗であっても斬るなど、現実主義者でアリスゲームを積極的に進める。
サラ
真紅の元ミーディアム。真紅と猫のジョナサンがいることを両親に隠している。真紅が水銀燈ばかりに構っているので、あまり水銀燈の事を好きではない様子。

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