ピエール・ブルデュー

ピエール・ブルデュー(Pierre Bourdieu

フランス人の、社会学者、民族学研究家、思想家。1930年〜2002年。

アルジェリアでの社会人類学的なフィールド調査をおこない「文化資本」という概念を初めて整理し提唱した。

学生時代は、哲学を学んだが、同時に『社会学年報』の影響を被った。この時期の『社会学年報』は、エミール・デュルケムが1917年に死んだ後しばらくして、フランス社会学としては第2世代にあたる研究者が活発に活動していた時期だった。

ブルデューは、アルジェリアの対フランス独立戦争に徴兵で出征した。後、アルジェリアに留まったが、教師を勤める傍ら、アルジェリア社会の社会人類学的なフィールドワークをおこなった。この時期に「(哲学から)民族学に転進した」とも言われる。

ブルデューは、広い意味での「制度論」を現代的に深めた研究者の1人と言える。つまり、明文化された制度と、パターン化された暗黙の文化的“制度(慣習)”との関連を探求した研究者の1人だ。ブルデューのこの研究路線は、人類学研究をベースにした社会学理論の研究と言える。

文化資本の概念に関連して「ハビトゥス(人々が社会生活を通じて習得する後天的な振る舞いや発想などの総体)」、「プラチック(ハビトゥスによって支持され、パターン化された個々の慣習的な言動)」、「象徴的暴力(教育過程を通じて、子どもや若者に、ある社会の支配的な価値観を刷り込む力、作用)」などについて論じた。

主著は、『再生産 教育・社会・文化』(1970年,ジャン=クロード・パスロンとの共著)『ディスクタシオン』(1979年)、『実践感覚』(1980年)。初期のアルジェリア研究を知る著作に『資本主義のハビトゥス アルジェリアの矛盾』が、中期以降の学術体制の自己批評、自己検討として『社会学者のメチエ』や『社会学の社会学』がある。

メモ

  • 1930年、フランス南西部、ペアルン地方の小村で生まれる。
  • 1939年、ナチ・ドイツのポーランド侵攻。英、仏、ドイツに宣戦布告。
  • 1940年、フランス、ナチ・ドイツに敗戦し、ヴィシー政権成立。
  • 1944年、パリ解放。
  • 年代調査中、ブルデュー、奨学金を得て、地方のリセに入学。後、パリに出て大学進学準備過程に。
  • 1951年、高等師範学校に入学。
    高等師範学校では、哲学関連をルイ・アルチュセールガストン・バシュラールジョルジュ・カンギレムらに学ぶ。『社会学年報』刊行グループの影響も被った、とされている。
    学生だったジャック・デリダミッシェル・フーコーらと知己を得る。
  • 1954年、アルジェリアで対フランス独立戦争本格化。
    ブルデューは、この年高等師範学校を卒業。リセの教職勤務に着く。
  • 1955年、徴兵されアルジェリアに出征。
    ブルデューは兵役期間終了後もアルジェリアに留まり、教職を勤める。傍ら、アルジェリア社会のフィールドワークをおこなう。
  • 1957年、この頃からフランスの複数の大学で社会学の講座が開かれるようになり、社会学の学位が制度化される。
  • 1958年、アルジェリア臨時独立政府発足。
    1958年〜1960年、ブルデュー、アルジェ大学に助手として勤務。1958年には、『アルジェリアの社会学』を発表。
  • 1961年、パリ大学の助手に着任。
  • 1962年、アルジェリア独立。
    この年、ブルデュー、リール大学の助教授に。
  • 1964年、この年から社会科学高等研究院助教授に。
  • 1968年、5月のパリ騒乱の時、ブルデューは37歳だった。
  • 1970年、『再生産 教育・社会・文化』(ジャン=クロード・パスロンとの共著)公刊。
  • 1979年、『ディスタンクシオン』公刊。
  • 1980年、『実践感覚』公刊。
  • 1982年、コレージュ・ド・フランス教授に。
  • 2002年、死没。
  • フランスは、「社会学」という分野を提唱したコント、社会学の基礎を整理したデュルケムを生んだ国だが、かつてデュルケムが大学で開いていた講座は「教育学及び社会学」だった。実は、フランスのアカデミズム制度には、1950年代末頃まで社会学を自律した分野として認めない風潮もあった。つまり、ブルデューは、アカデミズムに制度化されたフランス社会学者の第1世代と言う事もできる。
  • ブルデューの研究テーマには、教育制度の研究もある。この分野での研究も、ハビトゥス=プラチック概念をベースにした文化資本の理論が関わってくる。
  • 晩年のブルデューは、アンチ・グローバリズムを唱える論客としても活動した。ブルデューの主張は、高速化した市場主義、資本主義による各地の文化の画一化に反対する、といった主旨だったと思える。

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