エピグラフ

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エピグラフ epigraph

「エピグラフ(epigraph)」とは、文芸用語では「作品冒頭や、書籍の巻頭に置かれる短い章句」を指し、伝統的にには、先行作品や俚諺などの引用になる。(内には、章ごとの冒頭に、章題とは別に、エピグラフを置く例もある)

新たに書き起こされた章句をエピグラフの位置に置く作例もある。ただし、「献辞」の類は、巻頭に置かれている場合でも、本来は「エピグラフ」には含まない。

英語では、一般的には「石碑などに刻まれたあまり長くない銘文の類」を意味し、特に「建築物の礎石に刻まれたもの」を強く意味する。あるいは、硬貨に刻印された章句を意味したりもする。

文芸で、伝統的に言われる「エピグラフ」は、「引用(quote)」の類の1種に含まれる。このことから「エピグラフ」をもっぱら「警句」と考える向きもあるが、これは限定しすぎ。

「エピグラフ」が「警句」の類であっても構わないが、警句であるとは限らない。むしろ、内容の要約であったり、要点の示唆であったりする。あるいは、対照などの意図から、強いて、内容要点の反例であるようなエピグラフが置かれたりすることもある。

ある文芸作品のエピグラフが、極短い序文の体裁をとることもあるが、ことに小説類のエピグラフは、普通、本文で語られる架空の出来事とは直接のつながりを持たないのが典型的。

メモ

エピグラフの例
  • 『J・アルフレッド・プルフロックの恋歌』(T・S・エリオット)では、ダンテの『神曲』の一節がエピグラフに置かれている(伝統的な例)
  • 『ミザリー』(スティーヴン・キング)では、本文の主人公である架空の作家が書いたという設定の架空の小説の一節が、エピラフの位置に置かれている(伝統的ではない例)。
  • 『二十世紀旗手』(太宰治)では、エピグラフの位置に「−−(生れて、すみません。)」という句が新たに書かれている(伝統的ではない例)。
エピグラフの物語論的整理
典型的なエピグラフは、本文に対して意味的にメタな関係になるが、通例は、本文執筆者の文責範囲で執筆者の意図を反映し、作品構成や、書籍と一体として扱われる。このため、現代的な物語論では、エピグラフを、書名や章題と共に「パラテクスト」と呼ぶ範疇に整理して考える。

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