水商売専門高校の設立に携わるところから12年、開設以来10年の思い出話。野球部の甲子園優勝の話なんかを中心として、色物が社会に認められる現在に至るまでの、苦労もしたけど世かいでみんな前向きに邁進した日々を振り返る。
ものすごい「もしも」で作られた学校の顛末を書くことによって、学校教育の矛盾点とか、学ぶことの価値とか、そういうのを真っ正面から書いてあります。
- 著
- 室積光
平成××年3月2日、東京都教育局は水商売に関する専門教育を行う都立高校「都立水商」を歌舞伎町に設立すると発表。ホステス科、ソープ科など7学科でのスタートが決定済!?
用語や登場人物
- 用語や人名
- 解説
メモ
- 読みの「とりつみずしょう」は文庫の奥付より。
- コミック化もされてます。人物設定などはいろいろと違いもあるのかな。
- ドラマ化もされたようです。
- いちいち感動のツボをついてくるな。それぞれの人生の物語があって集まった教師たち、のところで既に。わずか一ページの紹介に人生がにじみ、そんな人々が集まって変えていったのだ作り上げたのだという、達成感を演出している。教師も生徒も、尊敬できる人間として成長していくという誉める書きかたなのでなおさらですね。
- 細かいところで、ここでこのネタが使えるというものをキッチリと盛り込んでいる。これこれとしようとしたけど、これこれの問題があり、これこれの提案があり、こう落ちついた、みたいな。
- 意外だが合理的な、だけど当事者としては困惑せざるを得ないところもあるような、そんな愉快な出来事が盛りだくさん。この息つく暇もない愉快展開が最大の魅力。
- 読んでませんがマンガの連載も長いようですね。実際、一ページに詰め込まれたネタを開くだけで何話も書けそうです。
- じつは半分近く野球小説だったりしますが。
- 元高校野球のエースだが教師になったとか、元ナンバーワンソープ嬢とか、音大出身の女性音楽教師とか、中学で援助交際で逮捕されたりして入学したとか、両親を亡くしとしの離れた弟を抱えて水商売にとか、サックリとわかりやすい記号的な紹介に、エピソードをうまくからめてたと思った。
- 定年前の校長は威厳溢れる風貌だが理解ある人でー、みたいな定形を、かつて女郎置場で育った過去に触れる就任の挨拶でさっくり印象づけてさ。要所要所で、上手く行くように裁定したり、応援したりというのを、持ち上げる筆致で書く
- 設立を提案した文部省エリートが、入学式で「さすがに普通の小役人とは違うな」みたいな評価を受けたり、生徒たちによる入学歓迎の式典に来賓として呼ばれて喜んでみたり、卒業式で成長ぶりに感激してみたりとか、ほんとちょい役なのにキッチリあとあとまで生かされてるとかね。最後のほうでは高野連の策動に裏で圧力かけて見せるなんてのも。
- 基本的にいい人が多い、失敗も前向きゆえに転けるみたいな感じ。
- 大嘘から派生する、たしかにそうなるよなという状況の「普通とのずれっぷり」とか、こまめに拾ってあって、そのへんもコメディタッチに上手い。大嘘から論理的に行動する結果として突拍子もない結論が出て、説得力があるけどお馬鹿な情景を作りだす。
- 女子生徒の男子生徒相手の抜き打ち実習の必然性とどたばたから、結果として男子生徒諸君の欠席率が異様に低くなるというオチとか。